今回は調剤薬局内で調剤ミスをした際に起こる調剤過誤とその対策について解説します。

 

調剤ミス、調剤事故、アクシデント、ヒヤリハット、インシデント、調剤過誤の意味の違いについて

同じような意味ですが、詳しく見ると少し違います。

データ引用:薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2018年 年報

→意味の違いについて詳しく知りたい場合はこちらをご覧ください

 

 

 

ヒヤリ・ハット(インシデント)とは?

ヒヤリ・ハット(インシデント)とはこの実際に事故が起きる前に未然に発見された、または間違った医療行為などが行われたが、患者様に影響を及ぼす事はなかった場合をいいます。

ヒヤリ・ハットの語源は「ヒヤリとした」「ハッとした」から来ています。

インシデントは一歩間違えれば大惨事になっていたかもしれないという意味の英単語になり、ヒヤリ・ハットと同意義です。

ここでは以降はヒヤリハットに統一します

 

調剤事故を防ぐためには、事故の元となっているヒヤリ・ハット(インシデント)を未然に防ぐ事が大事になっております。

今回は薬局で実際に起きたヒヤリハット事例を参考にどうやって事故を未然に防ぐか分析していこうと思います。

 

 

薬局で実際に起きたヒヤリ・ハット事例について

薬局で起こるヒヤリハットは公益財団法人日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業にてデータが集められ、レポートとして公開されています。

薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業のURL:http://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/index.html

こちらのサイトでヒヤリハットの報告によると2018年の時点で 33,083薬局が参加し、79,973件のレポートが報告されているとのことです。

参加するためには→こちら

こちらのデータを利用して当社で独自にまとめていこうと思います。

 

 

調剤薬局でのヒヤリ・ハットの事例

こちらのグラフを御覧下さい

※こちらのデータは調剤薬局に限定されています

データ引用:薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2018年 年報

薬剤取違え、数量間違い、規格・剤形間違いでほとんどのケースを占めているというのがわかります

また、ここで注目していただきたいのは「処方せん監査間違い」についてです

薬局でのヒヤリハットには大きく分けて2種類あると考えています。

・単純なケアレスミス(処方箋に書かれた薬を正しく患者さんへ調剤する事に関する)
・知識不足によるミス(医師の処方の間違えの監査に関する)

の2種類です

ここで単純なミスと薬剤師の知識不足のミスで分類した以下のグラフを御覧ください

 

ヒヤリハット事例のうち95%が単純ミスによって引き起こされていることがわかります。

 

 

なぜヒヤリハットが起こったか

こちらのグラフを御覧下さい

データ引用:薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2018年 年報

「確認を怠った」が最多となっています。次に「その他」を除くと「勤務状況が繁忙だった」となっています。これは複合要因で起こる場合もあります。

調剤ミスが起こりやすいポイントをしっかり認識する事が対策を取る上で大事になります。

 

 

ヒヤリハットが重大過誤(アクシデント)に繋がった例

調剤事故として日本薬剤師会に報告された調剤事故件数が年間で平均30件存在しています。

日本薬剤師会に報告された調剤事故件数

平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年
件数 45 47 38 18 27 33 33 27

参考:栃木県薬剤師会

ハインリッヒの法則によると「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する」とのことですのでヒヤリハット事例のうち、約0.3%で重大過誤に発展すると言ってもいいかもしれません。

調剤事故は意外と身近に起こり得るという事がわかります。

 

 

調剤事故を未然に防ぐ(ヒヤリハットを起こさない)ためはどうするべきか

・単純ミス(薬剤取違え、数量間違い、規格・剤形間違い)の対策

対応例1:1人ではなく他人の目でミスが無いか確認をする

これはミスを防ぐやり方で最も即効性が高く効果があります。

やり方として、ピッキングを行う人、監査を行う人を別々に役割分担を決め、患者さんに出す前に自分とは違う人に確認を行ってもらうやり方です。この時にハンコなどを押す仕組みにしておくと後々ミスの分析に役に立ちます

すでに別の1人が確認をおこおなっている場合は確認役を2人にするなどをするとより安全になります。

しかし限られた人的リソースの中で薬局業務に更に負担を強いるのは現実的ではないかもしれません。

対応例2:監査システムを導入する

監査役の人の代わりに監査システムに間違いがないかチェックしてもらうやり方です。

散剤だけではなく錠剤や外用などが監査可能な薬剤監査システムを導入するのがおすすめです。

監査システムはかなり効果が高く、ミスが90%下がったというデータもあります(参考:ミスゼロ子)しかし導入する場合に費用がかかるという問題があります。また慣れるまでに時間がかかったり機械の種類によては操作が煩雑な事があります。

→監査システムについて

対策例3:ミスが起こらないよう意識する

すこし精神論になってしまいますが、意識を変えるだけでも大きくミスは減ります。例えば金曜日はヒヤリハット報告件数を0にするなどの目標を掲げる、朝一のミーティングに調剤ミスの例などを報告するなどだけでも意識が変わり、ミスは減ると考えられます。

対策例4:責任の所在を明確化する

例えばダブルチェック時に確認用のハンコを必ず押すようにするなど、誰が確認したかを明確化すると確認する側にも責任感が芽生えます。責任の所在が不明のままだと、自分にはそこまで関係ないなど、手を抜く傾向にあります。

対策例5:整理整頓をする

普段から整理整頓を心がけるなどをすると、慌てて探すなどの時間が減り、ミスが起こりづらい環境を作ることができます。整理整頓をきちんとすることで頭も整理され、また不測の事態になっても落ち着いての対応がやりやすくなります。

対策例6:マニュアルをしっかりする

よく間違えるパターンなどがある場合、ミスを起こさないための手順などをマニュアル化しておくことで事前にミスを防ぐとこができます。またマニュアルを作った場合、マニュアルを守ることも大事になります。マニュアルを作ったのに守られないのではマニュアルを作った意味がありません。

対策例7:間違いやすい医薬品同士を近くに配置しない

これはシンプルで有効な方法です。特にOD錠などは隣同士に配置するのはミスのもとです。ただ、すでに多くの薬局でこの対策は取られていると思い、また新たに場所を移動した際、薬をピッキングする際の新しい場所を記憶する必要があり、負担が増えます。

対策例8:粉などを予製として調剤しとく

よく出る処方で主に散剤に関しては予め調剤(予製)をすると、繁忙な時間が分散されるためミスが減ると考えられます。ただし、予製に関しては予製自身をきちんと監査出来るよう散剤の分包紙にカラーペンで線を引く、印字をするなどの工夫をする必要があります。

・知識不足による処方せん監査間違いの対策

件数としては少ないのですが処方箋監査は薬剤師の重要な業務であり存在意義なのでこれは見逃すことはしてはいけません。

これに関しては日々の勉強や、処方箋を見て違和感を感じる能力を身につけるなど、単純な方法で解決できる問題ではなく、日々精進する必要があります。

 

調剤ミス対策のまとめ

以上のデータより単純ミスが原因の多くの占めているため、主に単純ミスを防ぐ仕組みづくりが大切になります

人間はミスをするものという認識を持って問題解決をする事が大切です。ヒヤリハットを未然に防ぐととで患者様と現場で働く薬剤師双方にメリットがあるので起こってからではなく事前にしっかりと対策を取ることが大切です。

また重大事故に発展するかもしれないという意識を持つのも大事かもしれません。

調剤ミスによっては患者さんが亡くなってしまうかもしれないという事を頭の隅にでも置いとくだけで意識が変わると思います。

 

 

 
※この記事は当社の薬剤師である濱宏樹が監修しております

 

 

薬剤監査システムを使用する事のメリット、デメリットについての記事はこちら

 

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